小学校に入学したときは、あんなに目をキラキラ輝かせて勉強を含めて新しいことになんでも興味を示していたのに、最近は学習意欲がなくなったのではないか、という我が子の変化にお悩みをお持ちの方は多いと思います。
中学生においても、小学生だった頃と比較して、なんとなく学習意欲が下がっていると感じる親御さんが多いと思います。
そんな時に親はどのように接していけばよいのでしょうか。
効果的な接し方や、また逆効果となってしまう接し方があるのでしょうか。
こどもの学習意欲と親の教育に対する態度、考え方には関係がある、という研究結果もあります。今回はそのあたりに焦点をあてていきたいと思います。
目次
学習意欲と学力
過去に行われた様々な調査によると、こどもの学習意欲と学力の間には関係があり、学習について肯定的にとらえているこどもがより学力が高い傾向があることを示しています。
以下は、文部科学省 国立教育政策研究所の資料からの抜粋です。
※表中の科目の後のA、Bは以下の通り
- 主に知識に関する問題(A):身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や,実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能など
- 主に活用に関する問題(B):知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や,様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力など
こどもの学力向上のためには、学習意欲が増すような環境を整えることが、こどもを支える側が気をつけなければならない点であると言えるでしょう。
では、そもそも「学習’意欲’」とはいったい何でしょうか。
自分から進んで勉強に取り組む姿勢であるということは分かると思いますが、ある心理学の研究結果によると、「意欲」とは「ある価値観に対し、それへ近づくための期待が持てるかどうか」ととらえられているそうです。
言い方を変えると、「望ましいと思う姿に自分がなれそうなのかどうか」、ということが意欲と強い関係がある、ということになります。
ですので、こどもは成長にともない、様々な価値観を身につけ、それらと自分の状態とを比較したり、親や先生からの期待を感じ取ることで「意欲」が増減していると考えることができます。
ということは、自分や周りの人が期待する学力から離れた状態がつづいてしまうことで、学習意欲が徐々に下がってしまうということが言えると思います。
こどもの意欲を引き出すには
では、この学習意欲の低下を食い止めるには、どのような手助けや接し方が必要なのでしょうか。
本来こどもは成績に関係なく新しいことを知りたいという欲求や、意識せずとも自分を成長させようという欲求を生来もっているものです。自分もがんばればできるようになるという意識を持たせることが必要です。
学校の先生の影響もありますが、特に小学生に対しては、親のかかわり方が重要になってきます。それは家庭学習時間と学力の関係を調査した結果からもわかります。
以下のグラフは、ベネッセ教育総合研究所の資料の抜粋です。
■図3-1-2 平日の家庭学習時間(学校段階別・成績/高校偏差値層別、経年比較)
注) 平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。
上記表からは、家庭学習時間が短いほど学力が低下することがわかります。
大事なのは家庭学習にいかに意欲的に取り組ませることができるか、ということです。そのためには、こどもがみずから’主体的’に学習に取り組むように仕向けるかが重要です。
親のかかわり方としては、どのようにすればこどもがこたえに近づくことができるのかを働き掛けていく必要があります。
そのためには、どのような言葉が必要でしょうか。励ましの言葉や、ほめ言葉、努力を促す言葉が必要でしょう。
特にほめることは最も重要で、例えこどもが解答を間違えた場合でも、その過程や、別の良いところを見つけてあげるといったことが必要でしょう。
こどもの意欲を引き出すには親の言葉が重要であることがわかりましたが、それだけでは足りないという結果を示す研究結果もあります。
こどもの学習に対し、積極的に親が関わる家庭のこどもの方が、あまり親が関わらない家庭のこどもよりも学力が高い傾向があることは、複数の調査結果から明らかになっています。しかし、中には積極的に親が関わっているのにもかかわらず、学力が向上していないという結果も出ています。
これは何故でしょうか。上述の様な「励まし」、「ほめ」、「努力を促す言葉」で同じように接していてもこどもの学習意欲の向上に役に立っていないのです。こどもの個人的な問題なのでしょうか。どうもそうではないようです。
研究結果によると、このような「積極的にこどもの学習に親が関与しているにもかかわらず、学力が向上しない。」という家庭には共通の課題があるとのことです。
それは、教育に対する親の態度に原因があります。具体的には親が、「学校の教育内容を批判する」、「学習内容について試験以外に使うことはない、といったことを言う」、「勉強しなくても生きていける」といった教育に対して後ろ向きな態度を示すことにあります。
それが例えこどもをかばうための言葉であったとしても、それを受け取ったこどもにとっては学習に対する意欲を下げる要因となることがあります。つい口から出てしまいがちですが、こどもの前では細心の注意を払わなければなりません。
今回のまとめ
いかがでしょうか。今回は、こどもの学習意欲をいかに引き出すのかという点と、逆効果になってしまう注意しなければならない言葉について書きました。要点を以下にまとめます。
- こどもの学力と学習意欲には大いに関係がある。
- ’意欲’は本人が望ましいと考える姿に近づけるかどうかに関係している。
- 自分の希望や周囲の期待からずれた結果が続くと、学習意欲は下がる。
- 本来こどもは、新しいことを知る欲求、自己を成長させようとする欲求を持っている。
- こどもの主体性を引き出し、学習に取り組ませることが重要。
- やはり「ほめる」ことは一番大事。
- 教育に後ろ向きな態度を示すことはしてはいけない。
ご参考になさってください。
参考文献
学研教育総合研究所:https://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/edu/series/09/page1.html
国立教育政策研究所:https://www.nier.go.jp/13chousakekkahoukoku/data/research-report/crosstab_report.pdf
ベネッセ教育総合研究所:http://berd.benesse.jp/berd/center/open/chu/view21/2006/04/c03data_01.html
第一生命経済研究所:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/news/news0710.pdf
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