こどもの学力に影響を与える要因とは何なのでしょうか。
親の年収や学歴が高い程、そのこどもの学力は高い傾向があることは、古くから調査結果として表れています。
親の年収や学歴がある程度高い場合、こどもの教育にかける費用が相対的に高くなり、それに伴って学校以外での学習時間が多くなることから、学力が向上すると考えられます。
こどもの学力は学習時間(学習量)のみに規定されるものなのでしょうか。それともそれ以外に学力に作用する要因はあるのでしょうか。
今回はそのあたりに焦点をあてていきたいと思います。
目次
こどもの貧困率
近年、日本のこどもの貧困率が増加していることが社会問題としてたびたびメディアで取り上げられています。
ここ数年は若干改善傾向にあるようですが、依然としてこどもの6~7人にひとりの割合で推移しています。
現代の日本で約15パーセントのこども達が貧困状態にあるということは、にわかには信じられないと思いますが、ここでいう「貧困状態」とは一般的にイメージされるような、明日食べるものにも苦労している状態(絶対的貧困)というものではありません。ここで使われている”貧困”とは、日本の「相対的貧困率」を指しています。
これは、日本社会の中で「普通」とされる生活を享受することができない状態のことを指しています。ですので、「貧困」かどうかは、日本の平均的な家庭の「普通の生活」との比較によって相対的に判断されるものなのです。「貧困」の基準が、その人が生きている国、地域、時代等によって、変化するということが「明日食べるものにも苦労する状態」である「絶対的貧困」との違いです。
「貧困状態」にあるとは、厳密な計算式はここでは省きますが、簡単にいうと日本人の所得の平均の半分以下の世帯ということになります。
このような家庭では、こどもに満足な学校外教育を受けさせるだけの余裕が無いため、学習時間が少なくなり、比較的学力が低い傾向にあります。
学習時間以外にも、親の教育に対する考え方や意識、こどもへの期待値の大小やコミュニケーションの取り方が学力に影響を与えることが調査結果として示されています。
親の学歴が高いほどこれらの指標の結果も高くなり、それがこどもの学力に比例していることも調査結果に示されています。
学習効果の高い「やり方」
確かに学校以外で行う学習量や、親の期待の大きさがこどもの学力に比例しています。
ではこどもの学力は、親の収入や学歴と関係の深い、学習量の大小のみに支配されてしまうのでしょうか。
そうではなく、こどもの学力には「学習量」だけでなく、その「やり方」も大きく作用します。
「学習量」は親の収入や学歴といった家庭環境と比較的強い関係がありますが、学習効果の高い「やり方」を行うこどもとその家庭環境は、それほど強い関係がないという調査結果があります。
すなわち、学習効果の高い「やり方」を意識的に取り入れることで、家庭環境に起因する学力格差を克服できる可能性があるということです。
では、学習効果の高い「やり方」とはどのようなものでしょうか。
2つの学習の仕方が挙げられます。
- 丸暗記型のスタイルではなく、学習している内容の意味を理解しながら進める学習の仕方
- 学習した内容とその効果、結果を定期的に振り返り、必要な対応をとることで効果を高める学習の仕方
ご家庭でも上記のような学習のやり方を取り入れることで、学力の向上が見込めます。
ただ、そもそもこういった考え方を取り入れる余裕のない家庭環境が問題となっているわけですので、このような対策は学校教育の中で指導されていくべきものであると考えています。
今回のまとめ
いかがでしょうか。日本のこどもの学力は、残念ながらその家庭環境による格差が存在します。現在の日本では、約15パーセント程度が貧困状態にあり、そのような家庭ではこどもの学習に関する支出が抑えられる傾向にあります。その結果、こどもの学校外での学習機会が減少し、学力格差につながっています。ただ、学校外での学習等、「学習量」だけでなく、学習の質である勉強の「やり方」に目を向けることで、この学力格差を縮められる可能性があります。今回はこのような内容について書きました。要点を以下にまとめます。
- 親の年収や学歴が高い程、そのこどもの学力は高い傾向がある。
- こどもの学力は学習時間(学習量)に比例する。
- 現代の日本では、約15パーセントのこども達が貧困状態にある。
- ここで使われている”貧困”という言葉の意味は、「相対的貧困率」を指している。
- 「相対的貧困率」とは、その社会環境で「普通」とされる生活を享受することができない状態のことをいう。
- こどもの学力には「学習量」だけでなく、その「やり方」も大きく作用する。
- 学習効果の高い「やり方」を行うこどもとその家庭環境は、それほど強い相関がないという調査結果がある。
- 学習効果の高い「やり方」は、学校教育の中で指導されていくべきものである。
ご参考になさってください。
参考文献
内閣府:https://bit.ly/2OSrbA3
ベネッセ教育総合研究所:https://bit.ly/3ubBFdM
ベネッセ教育総合研究所:https://bit.ly/3qD3dqg
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